映画「ぼけますから、よろしくお願いします」自主上映会のために制作

「母が母でなくなった」 昨夜は2階で涙を止められず
灯りも点けたくなかった 冷え込んだ空気が 尚更切なくて

朝を迎えても 戸惑い隠せず
でも父だけは いつもと変わらず 優しい瞳で

まっすぐ母を見ていた 父の瞳は迷うこともなくて
二人には 連れ添ってきた証があると
はじめて 気付いたんだ

いつも与えられてきた そんなことにも気付けない私で
酷く落ち込んだ時にも 真っ先に母は 慰めてくれたの

父が腰を上げ 台所向かって
リンゴ剥いたの 母への想いが 包まれていた

まっすぐ歩んできた 廻ってゆく時代(とき)を幾つも越えて
二人には 寄り添ってきた心があって
愛らしい リンゴだった

まっすぐ母を見ていた 父の瞳は迷うこともなくて

まっすぐ家族を想う 母の手がゆっくりと父を探す
触れ合い 握り締めた父の瞳に
変わらない 愛が溢れて 私の 心も解けたよ